キャプテン

誰にも自分にとってのバイブルというべき本がある。

20代後半の僕にとってバイブルだったのは、ある漫画だった。

その漫画こそ、今回紹介する『キャプテン』なのだ。

この本がきっかけで、僕はスポーツ科学という学問を自分の専門にしようと思い、2度目の大学を受験した。そして、谷口君たちにとっての野球と同じ、自分にとっての打ち込める何かを探していた。

小学生の頃、キャプテンのアニメを見ていた。野球は好きじゃなかったけれど、とりあえず夕方に放映されてるアニメは何でも見ていた気がするし、僕と同世代のテレビっ子はみんなそうだと思う。

大学を卒業してしばらくしたころ、デザイン科の友達とスポーツ漫画の話で盛り上がったことがある。そのときに『キャプテン』の話題も出た。今、共同で作品を作っているF君が、野球漫画で一番を選ぶとしたらキャプテンかなと言ったように記憶している。そして、そのことはしばらく忘れていた。

その後、僕はなぜかプロテインメーカーに勤めはじめた。職場にプロテインメーカーを選んだのは、スポーツというものに少し興味をもち、学生時代にスポーツに打ち込めなかったことに未練を感じはじめていたからだ。けれど、スポーツに関しては疎かった。特に野球というものに、まったく興味がなかった。ルールもまったく理解していなかった。右中間は宇宙間だと思ってたし、ショートはどこを守っているかわからなかった。ファースト、セカンド、サードがそれぞれ1塁、2塁、3塁を守備してると思っていたから(笑)ショートって何?といった状態だったのだ。スポーツに関連するメーカーに勤めていながら、日本で一番人気のある超メジャーなスポーツを知らないなんていけない。でも、野球中継を見てもよくわからない。そんな時、『キャプテン』のことを思い出した。そう、難しいことは漫画で勉強するに限る!そうおもった僕は、古本屋で『キャプテン』文庫版の1巻を買った。

読みはじめたら、もう止まらない。アニメを見ていたから、すんなり入り込めたっていうのもあるけれど、次が読みたくて仕方がなくてその後は新品の本を本屋で買った。今と同じで、その頃もお金はあまりもってなかったから、キャプテンとプレーボール合わせては少々物入りではあった。しかし、止まらないのである。次が読みたくて仕方がない。

なんといっても名門、青葉学園の2軍だった谷口君が、墨谷ニ中のメンバー達にレギュラーだったって勝手に勘違いされて、、、という最初の物語の展開が、他のスポーツ少年漫画と違って、物語の世界と自分たちの生きている現実を、行き来しながら読むことを可能にしてくれる。

谷口君も丸井も五十嵐も近藤も、みんないたって普通の少年だ。
ヒーローもいなければ、魔球もない。かわいいヒロインも出てこないから恋愛要素もまったくない。皆が粛々と野球に打ち込む姿のみが描かれる。そして試合よりも練習のシーンに多くの時間が割かれているのも、この漫画の特徴だ。

これだけ野球というスポーツのゲーム性や、その試合展開の魅力のみに焦点をあてたスポーツ漫画は、他に類をみない。この本を通して僕は野球というもののルールを少しづつだが理解していった。

この物語に野球以外のテーマがあるとしたら、それは努力だ。主人公達は、生まれもって才能をもっている選手ではない。でもそれぞれが、努力する才能をもった少年達なのだ。

読み進めていくうち、自分の中に熱いものがわき上がってくるのを感じた。

僕は、スポーツがしたい。野球じゃなくていいから、何か打ち込めるもの、努力して何か成し遂げられるもの。そんなものを、若いうちに、まだ体力があるうちにやっておかなきゃって思ったんだ。

そして、こんな物語を、スポーツを体感した自分が作れたらいいなって、あのとき思ったんだよね。

もうすぐまた1つ、歳をとる。

谷口君たちのように僕は精一杯努力できているだろうか。

くじけそうになったときは『キャプテン』を読もう。

これは僕のバイブルなんだから。

そして僕は、自分に言い聞かせている。

『君は何かができる』ってね。

2009/05/31

  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA